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2021.6.16 22:14

彼のために。

小説家志望の高校生です。
私は片思い中で好きな人がいるのですが、その人は本の虫と言われるほど本が好きです。
私はそれがきっかけで小説を書くようになりました。
今までも何冊か書いてきて、彼に見せたら、すごい喜んでくれて、嬉しかったんです。
彼にリクエストをもらったのですが、「歌を元にした恋愛小説がいい。短いのでいいから。」
と言ってました。
彼はボカロや初音ミクが好きなので、「廃墟の国のアリス」という歌で作ってみたのですが、どうでしょうか。
長くなってしまうので、ここから先は見たい人だけみてください。

登場人物

九条愛里紗 (くじょうありす)
平井結城(ひらいゆうき)

目次

一章 廃墟の国

二章 試練

三章 初めての殺人

四章 廃墟になった夢と初恋の人

五章 愛里紗だけで行って

六章 廃墟の国のアリス

1 廃墟の国

曇天を揺らす警鐘と拡声器。
鳴り響く不気味なサイレンの音。
最近ではそれが当たり前になっている。
街は兵隊が駆け回り、空からは爆弾が降ってくる。
私たちの国は今、戦争をしている。
国にとって重要な役割をしているお父様はこの国を見捨てることなく必死に戦争を止めようとしている。
今、私の国には2パターンの人間がいる。
ひとつめは自分が戦争をして死ねば国のためになると信じて敵軍を撃ち続ける人達。
ふたつめは罰せられる人達。国の方針、絶対兵隊制度という方針に従わずに、刑を受けたりする人達。
絶対兵隊制度とは国が選んだ人は絶対に兵隊にならないといけないという制度だ。
それに反対の人と賛成の人がいる。
それで国の中でもふたつに割れていて、戦争をしなくても戦争状態だ。
私は今、人があまりいないところにいる。
私は絶対兵隊制度に反対だ。
だってその人の気持ちになって考えて欲しい。
普通に生活していたのに国のせいで急に戦争することになって、それでも頑張って生きようとしたら「お前は兵隊になれ」って言われたらどうだろう。
絶望してしまう。
絶対兵隊制度に反するものは基本的に死刑だ。
成人してない男女や女性が選ばれた場合は刑が軽いが、成人男性はほぼ死刑。
私も少しは刑を受ける身なのだが、私はあのお父様の娘だ。私は刑を受けなくなった。
それでも不公平だと思うが、ひとつ条件があった。
廃墟の国に行くのだ。
刑が軽かった者たちはみんなここに連れてかれる。
廃墟の国は国という名前がついてるが、実際は普通より少し大きな街だ。ここはボロボロで、鉄骨がたくさん倒れていたり、血が散りばめられていたりして、廃墟の国という名前がついた。
ここからは誰も脱出出来ないと噂だが、一応出口はあるらしい。ここから出れば罪は消えうせる。
初めてみた廃墟の国に驚愕していると、スマホに一件のメッセージが届いた。
『大丈夫?私は愛里紗の味方よ。』
「お母様…。」
泣きそうになっていた目から涙がこぼれる。
『大丈夫。何かあったら連絡するね。』
弱音を吐きそうになるのをこらえ、大丈夫とメッセージを送る。
涙を拭い、立ち上がる。
私は絶対にこんな所から脱出する。
そんな固い決意をして私は歩き始めた。

2 試練

しばらく歩いていたが、やはり死体が気になった。
血生臭い匂いが鼻を突く。
それでも足に力を入れて歩いていた。
しかし、それでもびっくりするメッセージが届いた。
『お前に試練を与える』
試練?試練って何?
『ここには何人か人がいるはずだ。誰か一人を殺せ。』
「は?」
思わずそんな声が漏れた。
『なんでですか?』
一応国の人だ。なんで?と聞きたくなる気持ちをこらえ、敬語で文章を送る。
するとすぐに既読がついた。
『お前になんのためにスマホをもたせたと思ってるんだ。ただ廃墟の国を歩くだけじゃすぐに脱出できる。試練を越えなければどこまで歩いても脱出出来ない。』
確かにスマホをもたせられたのにはなんらかの理由があるはずだ。
それにしてもだ。誰かを殺す?
私はみんなが兵隊になるのが嫌で、みんなが例え敵でもその人を殺すのが嫌で反対しているのに。
『私にはそんなことできません。』
『ならば、お前はずっとこの国にいることになる。』
そんな…!
私には優しいお父様とお母様がいる。お兄様もだ。
その人達と離れ離れなんて嫌。
お母様に相談してみなくちゃ。
『お母様。話したいことがあって。』
『分かってるわ。試練のことでしょう?お願いだから、試練を超えて。』
なんでお母様まで!?
『なんで?お母様なら分かってくれると思ったのに。』
『私だって辛いわ。でも愛里紗と会えない方がもっと辛い。だからお願い。試練の言う通りにして。』
いつもは絵文字をつけて送るお母様が絵文字をつけない。
よっぽどの緊急事態だ。
お母様やお父様の期待には答えないといけない。
『分かりました。お母様。』
短い返答を送ってスマホをしまう。
覚めない夢のような感情が、泥沼に落ちて、見たことのない惨状が現実だと知った。
ここの街もかつては普通の街だった。
いつしかここで争いが起き、放置され廃墟になった。
早くここから出たい。鉄格子が上からドームのように円形に下りている。まるで鳥かごのよう。はやくこの檻の向こうに出たい。お父様やお母様、お兄様に会いたい。
そう思うと涙が出そうになる。
泣いてはいけない。泣いたら負けだ。
そう考えながら街をさまよい歩く。
早く試練を超えなければ、人を探さなければ。
思えばこの頃から私は少しずつ狂い始めていたのかもしれない。

3 初めての殺人

そのあと、街を悲しそうに歩く小さな女の子を見つけた。もちろん、試練の通りにしてしまった。
女の子は走り回って逃げていたが、私は逃がしはしなかった。
お父様やお母様、お兄様にまた会うために。
私はそんな一方通行な思いで人の命を奪ってしまった。まだ小さな女の子の命を。
私の心はまるでこの街と同じように、排水口で腐敗したように腐ってしまっていた。
血で濡れている両手を洗ったがまだ完全には消えなかった。
「眠たい。」
罪の意識に苛まれていると急に眠気が襲ってきた。
思えば1日ほどたった。
そろそろ眠くてもおかしくない。
私は少しためらったが、血がこびり付いた倒れた鉄骨の上で眠ることにした。
次に目を開けると、昨日と同じ景色が広がっていた。
覚めない夢のような感情が、泥沼に落ちて、今まで見たことのない惨状が現実だと知った。
格子状に咲く天井を今日も見ている。
鳥かごにとらわれている鳥のように。
その時私は思った。
もうこれ以上、人がここにきちゃいけない。
みんな狂ってしまうから。私のように。

4 廃墟になった夢と初恋の人

「嘘でしょ……。」
そんな声が出たのか、私には分からなかった。
『お前の家族はもういない。』
『なに言ってるの?』
『もうみんな死んでるからな。』
そんなメッセージ画面をずっと見つめているとだんだんその言葉を理解できるようになった。涙が浮かんできた。
泣いてはいけない。泣いてはいけない。
そんなことを思っても涙は止まってくれなかった。
私の夢だった。お父様やお母様やお兄様に会うことは。
お父様たちに会うために廃墟の国から脱出しようとしたのに。
私の夢は廃墟の国のようになってしまった。
捨てられ、誰にも見られることなく、儚く散ってしまった。
派閥。論争。同族嫌悪。殺人。戦争。
この世界は汚いことばかり。
廃墟になってしまった私の夢。
そんな私にもまだ希望はあった。
「結城…。」
『お嬢様。大丈夫ですか?噂によると廃墟の国に送られたみたいですが。』
結城は私の執事だった。
私は密かに、結城に恋をしている。しかも初恋だ。
でも私には少し遠くの場所にいる貴族との結婚が決まっていた。
私の恋は叶わないと分かっていた。
それからしばらく私は結城に冷たく当たってしまっていた。
それでも結城は嫌な顔一つせずに尽くしてくれた。
『お嬢様?私もそちらに行きましょうか?』
そんなメッセージが来てから、私は気づいた。
結城はここにきてはいけない。いつ死ぬか分からないここに来てはいけない。
例え来たとしても、私とは会えないかもしれない。
『来ちゃダメ!ここは危険なのよ!』
『しかし、私はお嬢様の執事です。それに。』
それに。で文章は終わっている。
何か言いづらいことなのだろうか。
しばらくするとメッセージの続きがきた。
『私はお嬢様のことが好きです。お嬢様が陰元様とのご結婚が決まった時は絶望していました。
そんなお嬢様をひとりで危険なところに放っておくわけには行きません。』
嘘。結城が私のことを?
嘘に決まっている。
『待って、気持ちはすごく嬉しい。けど、男の人は来れないんじゃないの?死刑になっちゃうんじゃないの?』
『大丈夫です。私はまだ17なので。』
そうか。成人してなければ死刑にはならない。
なら、来てほしい。ついそう思ってしまった。
『私、ここに来て欲しい。私も言いたいことがあるから。』
『かしこまりました。お嬢様。』
結城さえいれば。私は廃墟の国から出れるかもしれない。
一緒に二人で廃墟の国を出たい。

5 愛里紗だけで行って

あの連絡が来てから、しばらくした後、結城からメッセージが来た。
『いま、廃墟の国に来ました。』
『大丈夫?刑は軽かったの?』
『そんなことは今、どうでもいいでしょう?
早く合流しましょう。私に言いたいことがあると聞きましたし。』
『うん。いま鉄塔の下あたりにいる。』
『わかりました。すぐ行きます。』
それから5分ほど後、結城が来たはずなのだが。
その姿はまるで結城に見えなかった。
顔を赤く染めて、いつものスーツも所々ちぎれ、ボロボロだった。
「結城!?どうしたの!?」
「刑が、少しあって。それで、廃墟の国を歩いていたら、殺されそうに、なりました。」
「なんでそこまでしてくるの!?」
「お嬢様のためです。お嬢様が来て欲しいって言ったので。」
「そんな…!結城がこんな姿になるなんて、望んでない!」
結城、無理してきたんだ。私なんかのために。
私のせいだ。私が来て欲しいって言ったから。
「言いたいことってなんですか?」
いつもの笑顔で聞いてきたけど、今日はなんだか少し違っていた。苦しみや痛みに少しだけ顔を歪めていた。
「言いたいことは……。私、結城が好き。結城が好きって言ってくれた時、嬉しかった。二人でここから逃げたいって思った。それで来て欲しいなんて言っちゃった。結城が無理してるなんて知らないで。本当にごめんなさい。」
「大丈夫です。愛里紗が来て欲しいって言ってくれた時、僕も嬉しかった。」
結城が僕と言った。いつもはわたくしだったのに。
結城が愛里紗と言った。いつもはお嬢様だったのに
結城がタメ語で話した。いつもは敬語だったのに。
そんなことが場に合わず嬉しかった。
私は特別なんだって思った。
「結城。大好きだよ。」
「僕も、愛里紗が好きだよ。」
お互いに気持ちを言い合った。
お互いに見つめあった。
でもそんな幸せな時間はこの街では止まってくれない。
「待てよ!」
怒りで顔を引きつらせた女の人が、こっちに向かってくる。
結城はびっくりしたように私の手をとって走った。
聞かなくても分かった。
この人が結城を殺そうとしたんだ。
「結城!」
突然結城が転んだ。足を鉄骨の間に挟んでいた。
そんな時も結城は叫んだ。
「ひとりで逃げて!」
「そんなことできるわけ」
「愛里紗だけで行って!」
その顔がすごく必死で、私は従うしかなかった。
その後、結城がどうなったかなんて考えられない。
考えたくもない。
今度こそ本当にひとりになってしまった。
結城。天国に行ったら一緒にいようね。
そんなことを心で思って、私はまた歩き始めた。

6 廃墟の国のアリス

全ての希望を失った。
どんな夢も壊れた。くずかごに集めたみたいに。
ゴミのようになった私の存在なんて誰も見ていない。
結局私は結城の所に戻ってきた。
結城は笑っていた。違う、微笑んでいた。
まるで自分が愛里紗を守れた、とでも言うように。
格子状に咲く天井を今日も見ている。
鳥かごにとらわれている鳥のように。
黒いカラスが鳥かごの外から手招く。私を飼い殺す鉄格子。
ここにきちゃいけない。
もう、脱出したいとも思わなくなっていた。
お腹がすいた。喉が渇いた。
そんなことも感じない。
何も食べてないし、飲んでいない。
私はもう壊れてしまっている。
今頃、もともと住んでいた場所では何が起きているのだろうか。
お父様。お母様。お兄様。結城。
会いたい。会いたいよ。
ここにきて何度目かの涙が流れた。
私は結城の隣に横たわり、徐々に来る倦怠感に抗うことなく目を閉じた。意識が離れる瞬間に、カラスの鳴き声が聞こえた。

という感じで完結です。
貴族の女の子と執事の恋愛物語です。
あまり濃い恋愛だと、書いてて恥ずかしくなっちゃうので、軽〜く挟む感じにしました。
読んだ方は感想もらえると嬉しいです。
長くなって、ごめんなさい。

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